
ドラマの仏壇に「ん?なんか違和感・・・」
先日から始まった木曜日9時からの新ドラマ『しあわせな結婚』大石静さんの脚本で楽しみにしていた。
第一話のワンシーン、主人公ネルラの実家にある仏壇がちょっとした話題になっていました。
「仏壇あんなもん?? なんか違和感ある」「位牌が2つあったのが気になった」といった視聴者の声もあったようです 。とYahooニュースで記事になっていましたね。
仏壇店を営む私も思わずテレビに向かって「ちょっと待った!」と言いたくなる場面でした(笑)。
では、あのシーンの仏壇、いったい何が“変”だったのでしょうか?
仏壇や仏事にという方に、宗派ごとの違いや供養の作法の観点から紐解いてみましょう。あくまでも私の知っている範囲での記事となります。



阿弥陀さまのご本尊とお位牌の組み合わせ??
まずコンパクトサイズなお仏壇。注目は、お仏壇の内部。
まずは、お仏壇に、菩提寺さまの宗派のご本尊をお祀りしてと、お客様にお伝えして接客していますが、
中央に掛けられていた、御本尊のお掛け軸は真宗大谷派(東本願寺)で用いられる阿弥陀如来の御絵像でした。
浄土真宗では、各派とも御本尊さまは阿弥陀如来と決まっています。
真宗のお仏壇ということになるのですが、内部には、ところが、その真宗の仏壇と思われる内部に、**位牌(いはい)**が二つ並んで置かれていたのです。これは実は少し奇妙な組み合わせでした。
というのも、浄土真宗(真宗)では本来、位牌を用いない習慣があるからです。真宗では「人は亡くなった時点ですぐに成仏(仏になる)する」という教えから、他宗派のような霊魂の依り代としての位牌を重視しません 。その代わり、故人の俗名や法名(※後述)を記す過去帳や法名軸といったものを仏壇に備えるのが一般的です 。また、浄土真宗で授かる法名(ほうみょう、戒名に相当)は、男性女性を問わず**「釋(しゃく)」という字を冒頭につける**のが特徴です 。「釋」には「お釈迦様の弟子」という意味があり、仏の教えに帰依した証として法名の一番上に付ける決まりなのです 。
戒名は法名の記事は別のブログで書いてます。
ところが、ドラマの仏壇に映っていた位牌をよく見ると、そこには**「妙法○○」という文字が刻まれていました。「妙法」とは仏教用語で「素晴らしい真理の教え」という意味ですが、実はこれ、日蓮宗系で戒名(※日蓮宗では法号と呼ぶ)を記す際によく使われる特有の文字なのです 。日蓮宗ではお題目「南無妙法蓮華経」をご本尊とする教えから、戒名(法号)の一番上にその一部である「妙法」の二字を入れる習慣があります 。要するに、あの位牌に刻まれた戒名風の文字列は日蓮宗スタイル**だったと言えるのです。
ご本尊は阿弥陀如来なのに位牌が日蓮宗?
ここまででお気づきかもしれません。
ご本尊が浄土真宗、位牌が日蓮宗という、宗派のチグハグが生じていたわけです。
浄土真宗の仏壇に日蓮宗の位牌…
これは仏壇・仏具のプロから見ると「うーん??」と首をかしげる組み合わせでした(笑)。
通常、家庭の仏壇は一つの宗派に則って飾られます。例えば日蓮宗のご家庭なら、ご本尊は**「南無妙法蓮華経」の大曼荼羅や日蓮聖人の像**などを中央に祀り 、位牌は本尊を祀る段より一段下の左右に安置するのが一般的です 。仏壇が小さい場合は、同じ段に置くこともありますが。。
浄土真宗のご家庭なら、ご本尊は阿弥陀如来(絵像や名号)で、位牌の代わりに過去帳を置くか、どうしても位牌を置く場合でも仏壇内に控えめに置くことが多いでしょう。ドラマのように御本尊さまの前に、ドーンは、ないのですが。。
また、日蓮宗なら本尊は阿弥陀如来ではありえませんし、浄土真宗なら本来位牌を作らない——つまり、ドラマの仏壇は複数の宗派の要素が混ざってしまっているのです。
制作スタッフが「ご先祖の位牌が二つ必要」という物語上の都合から小道具を揃えた結果、たまたま宗派がミックスされたのでしょうね
実際、近年は浄土真宗の門徒様でも「故人を身近に感じたい」という思いから位牌を作るケースも増えており 、宗派の伝統に必ずしも厳密に従わないお宅もあります。とはいえ、阿弥陀様の前に日蓮宗式の位牌という組み合わせは現実にはあまり見ないため、私を初め、仏壇に詳しい方ほど「あれ?」と感じたのかもしれません。
線香の供え方にも現れた作法の違い
さらに細かい点ですが、ドラマ内で供えたお線香の作法。シーンでは香炉に線香が縦に立ててお供えしてありましたが、これは主に禅宗や天台宗など多くの宗派で見られる方法です。3本立てるのか1本立てるのかの記事はまた別のブログにて書いています。
一方、浄土真宗では線香は基本的に香炉に入る寸法に折って横に寝かせて供える作法をとります 。
「真宗ではかつて「常香盤(じょうこうばん)」という平皿状の香炉で抹香を焚いていた歴史があり、その名残から線香を立てずに横に折って寝かせる習慣が定着していると聞いたことがあります。
ドラマの仏壇は見た目は真宗風なのに線香は立ててあったので、ここでも「ん?」と感じる真宗門徒の方がいたかもしれません。
その他の細かな違和感あれこれ
他にも仏壇店目線で気になったところが多々。
例えば位牌のサイズです。ドラマ中では位牌が二つ並び、大きさが微妙に違って見えました(片方はお母様の位牌とのことなので少し立派なのでしょうか)。実は位牌の高さには暗黙のマナーがあり、「新しく作る位牌は、既にあるご先祖様の位牌より大きくしない」という習慣があります 。
普通はご先祖に対して失礼にならないよう、新規の位牌は同じ高さか少し低めに揃えるんですね 。没年月日までしっかり読めなかったので、あまりにもお母様のお位牌より小さいので、若くして亡くなった子供さんがいらっしゃるのかな。と推測。これは、今後展開されるドラマをチェックしてわかってくるかもしれませんね。
違和感の正体と仏壇が伝えるもの
総じて、ドラマの仏壇シーンの違和感の正体は「宗派や供養作法のチグハグさ」にあったと言えます。
普段意識しないかもしれませんが、日本の仏壇・仏具は、各宗派で実に多様です。近年は、お仏壇がコンパクト化してきて、ご自由に祀る。祈る場所のスペースとしてなってはおりますが、
それぞれの歴史的背景や教義に根差した違いがあり、本来は**「仏壇を見ればその家の宗派が分かる」ほど様式が決まっています。
逆に言えば、今回のように様々な宗派の要素がごちゃ混ぜになると、私的には、「???」となってしまうわけですね。
とはいえ、テレビの演出上のことですから、あまり重箱の隅をつつくのも野暮。
むしろ、このシーンをきっかけに「どうして違和感を覚えたんだろう?」と興味を持った方がいるなら、それは素敵なことだと思います。
仏壇は単なる飾りではなく、家族の絆やご先祖様との対話の場です。それぞれの宗派で大事にされる形や作法があり、それを知ることは先人の知恵や想いに触れることでもありますね。
ドラマの謎めいた仏壇が視聴者に不思議な印象を残したように、「なんでだろう?」と感じた違和感は、実は仏事文化への第一歩の好奇心かもしれません。ぜひこの機会に、ご自宅の仏壇やご自身の家の宗派について、お父さんお母さんやお祖父ちゃんお祖母ちゃんに聞いてみてください。「うちのお仏壇のご本尊は誰? 位牌ってあるの?」そんな会話から、仏壇の役割や宗派ごとの違いに少しずつ関心を持ってもらえたら嬉しいです。そして、大切なご先祖様をこれからも心を込めて供養していきましょう😊。
合掌
仏壇仏具のお困りごとなら 当店まで
このドラマの展開がめちゃめちゃ楽しみな店長の私です。
我が家の仏壇、ここが変?わからない?と思われることがありましたら何なりとお尋ねくださいませ。
稚拙なブログ。最後前ご拝読ありがとうございます。